言葉遣いの乱れが虐待に繋がっていく
先月11月29日に北海道介護福祉道場あかい花代表の菊地雅洋先生の講演を受講させていただきました。
前半は医療福祉における問題点と今後の介護保険制度の方向性についてのお話。
後半は介護サービス事業のサービスマナーについてのお話でした。
どちらも、大変興味深いお話で、時には真剣に、時には楽しく聞かせていただき、
大いに学ばせていただきました。
その中でも、私が非常に印象に残っている点が、サービスマナーに関するお話です。
先生の話を聞きながら、ある場面を思い出すことができました。
実は、私が介護の仕事に携わるようになって間もない頃に、
利用者を紹介してもらえるという話で、某介護施設の30代男性職員の方と、
利用者宅で同席したことがあります。
その時の職員さんの言葉遣いとマナーについて、大変な衝撃を受けたのです。
70代の利用者の奥さんに対して、完全にタメ口
「あ~久しぶり。元気にしとった~?」
から始まって、失礼しますの一言もなく勝手に玄関から上がり、
かかとを踏んだ靴は揃えられることもなく、
部屋に入れば、奥さんより先に、あぐらを組んで座る。
私の方が明らかに年上だったのですが、利用者の家族にすらそんな対応ですから、
私に対しても、当然タメ口で、訪問前に名刺を渡したにも関わらず、
「あっ、事業所の名前なんやったっけ?」「あ~そうそう」みたいな…
別に悪意は感じられないのですが、とにかくそれが彼にとっての普通なんですね。
私は、介護業界に入る前は、一般企業で営業の仕事をやっていましたが、
たとえ、取引業者間の挨拶においても、
ビジネスの場で、しかも初対面の相手に対してタメ口で話すことは、
考えられないことであり、
ましてやお客様である利用者の家族に対して、タメ口で話すなどあり得ないことでした。
しかし、その後全く違う事業所の担当者であっても、男女問わず、似たような光景が繰り返され、
全てのやりとりがあり得ないことの連続で、大変なショックを受けたことを思い出したのです。
かなり大規模な施設であっても、役職者であっても、そんな言葉遣いなのですから、
施設内で働く職員の様子は見るまでもないでしょう。教育できているはずがありません。
時間が経つにつれて、当時味わった衝撃が薄らいでいったのかもしれません。
介護業界では、利用者の生活に長期に渡って、深く関わる性格上、親密度が高まってくると、
多少の言葉の乱れは、仕方ないのかもしれないと、知らず知らず諦めていたように思います。
我ながら、自分自身の感覚の麻痺にショックを受けました。
残念ながら、介護業界での言葉遣いが、以前に比べて格段に良くなっているとは思えません。
実際に、施設内での言葉遣いが徹底できていないという相談を受けることも多いのです。
というか、徹底できていない施設が殆どかもしれません。
先生の話を聞き、やはり、職場改善をするには、言葉遣いからだと改めて気づくことができました。
利用者に対する言葉遣いが乱れてくれば、職員さん同士の言葉遣いも乱れてくるでしょう。
逆の場合もあるでしょう。いずれにしても悪い連鎖反応が発生してきます。
新人職員さんが、新しい職場で感じる違和感の一つが、既存の職員さんの言葉遣いです。
キチンとできていれば、いい印象を持たれますが、
荒っぽい言葉が飛び交っていると、違和感を越えて嫌悪感に変わります。
利用者さんだけでなく、職員さん同士の会話においても、注意が必要です。
短期間で新人職員さんが辞めてしまう職場は、言葉遣いが原因かもしれませんよ。
ヒヤリハットと同じように、言葉遣いの乱れという小さなほころびが、
大きな問題に繋がっていきます。
施設内での虐待を引き起こすのです!
決して脅しではありません。事実です。
言葉遣いの乱れを、放置しておくと、起こるべくして起こるのです。
私のように、介護医療業界特有のマナー感覚に洗脳されないよう、
最低でも年に1回は、言葉遣い、接客、接遇について見直す機会が必要です。
そして、感覚が麻痺しないよう、何度も繰り返して学ばなければならないと思います。
私も、今後の研修においては、定番のテーマとして、取り上げていくことを決めました。
みなさんの事業所でも、次回の全体ミーティングから早速取り上げてください。